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保育士の賃金水準は低いのか!?

2016.8.13

普段から気になっていて検証してみたいと思っていたものの、なかなか忙しくて検証する暇がなかったので、お盆休みということで少し興味のあった内容について検証してみたいと思います。

 

テーマは、「保育士の賃金水準は低いのか!?」

 

テレビやインターネット等で保育士の賃金が低いという記事をよく見かけます。近年は、保育士不足もあって保育士の賃金水準を上げていこうという取り組みもスタートしています。

 

ただ、見かける記事に記載されている情報は、普段賃金コンサルティングなどをしている私からすると違和感のある指標ばかりを取り上げています。

 

例えばこんな感じ

 

 

一見すると、とんでもなく保育士の賃金水準が低いように見えますよね。

だって、全産業平均の66.6%しかないですから。

 

でも賃金コンサルタントは水準を見る際に平均賃金という指標は使いません。

 

なぜなら、平均年齢30歳の会社(A社)と平均年齢が45歳の会社(B社)でどちらの方が平均賃金が高いのかを論じても意味がないからです。

 

仮にA社の平均賃金が30万円、B社の平均賃金が35万円だったとしましょう。

これだけ見るとB社の方が賃金水準が高いように見えます。

 

でも世の中全体を見渡した時、30歳の世間水準が20万円台だったするならば、A社の賃金水準は高いと判断できますし、逆に45歳の世間水準が40万円だったとするならば、B社の賃金水準は低いと判断されます。

 

このように平均賃金というのは、賃金水準を比較する資料とすれば不完全なデータなんです。

 

そこで私たちが通常用いるのがモデル賃金という概念です。

 

モデル賃金とは簡単に言うと、その会社に入社して標準的に昇格昇進していった人の賃金水準を表したものです。

 

 

ややこしい話はここまでにして、モデル賃金を使っての保育園の水準と全産業平均との比較を行ってみたいと思います。

 

今回は、賃金構造基本統計調査の準拠指標を使用しました。賃金構造基本統計調査には、全国の保育士水準はあっても石川県の保育士水準は記載がありませんので、全国の全産業平均と石川県の全産業平均の差から仮の石川県保育士(女)水準を算出しました。

 

 

やはり、保育士の賃金水準は低いようですね。ただ注目してほしいのは、全産業計の石川県の女性水準と比較するとそこまで大きな差はないということです。一方で男性の水準と比較すると非常に低い水準になっています。

 

保育士という職業は、働く人のほとんどが女性です。上記、指標からわかることは、確かに保育士の賃金水準は職種としても多少低い水準にはありますが、最も大きな要素は男女間格差ではないかということです。

 

ただ闇雲に保育士の賃金水準が低いと言ってしまうのではなく、社会的な構造そのものを変えていかないとこの問題は解決しないのではないかと思います。

 

ということで、保育士の賃金水準が、全産業平均と比較して66.6%しかないというのは、少し大げさで、全産業平均の女性と比較すると多少低い程度である。それよりも問題なのは、社会全体の構造として男女間格差が大きく残っているということです。